2012年2月23日木曜日

Impression Honda NC700X



 2010年に打ち出されたHondaの2020年ビジョン、「良い商品を早く、安く、低炭素で」を基本に、世界中でリサーチを行い、日米欧のユーザーニーズに応えるべく生まれたのが、このニューミッドシリーズ。

多くの絶対性能重視のスーパースポーツユーザーに対して、性能や排気量のヒエラルキーにこだわらず、日常のシーンでの扱いやすさや利便性、楽にツーリングなどを楽しみタイと言う向きに、また、コミューターユーザーに向けて、コミューターの快適性と利便性をそのままにFUNライドが味わえたらといニーズに応え得る、従来のカテゴリーを越えた商品がこのニーミッドコンセプトシリーズと言うわけである。


安心感ある操縦特性と快適なクルージングを実現するパッケージ。幅広いニーズに対応した3モデルのシリーズ展開と個性的で所有感を満たす次世代のデザイン。お客様一人ひとりのニーズをさらに満たす快適装備と豊富なオプション設定。が、開発目標とされる。

上記の目標から、圧倒的な低燃費と環境性能をそなえた670cc・水冷・直列2気筒エンジンを新開発するこことで、十分な航続距離を確保しながら燃料タンクを小型化し、車体レイアウトやデザインの自由度を確保でき利便性の向上等が実現された。

また、ニューミッドシリーズは、モーターサイクルをもっと多くの人に、もっと自由に楽しんで欲しいと言う想い、Hondaの先進の「環境」「安全」技術に加え、「FUN」技術を盛り込んだモデルとして、新しいモーターサイクルの世界を創造する先駆けになるものと考えられているとのこと。

そして、ようやく国内発売となるシリーズ第1弾が、クロスオーバースタイルのNC700X。すでに、昨年来からの欧州、北米での発表会では高い評価をえているとのこと。

そのコンセプトは、扱いやすい、スポーツモデルの運動性能、低・中速域での力強いトルク特性を備えた新開発の低燃費エンジンによって実現される優れた”デイリーパフォーマンス”。ツアラーモデルの快適性、オンロードでの機動性とツーリング時に快適性を備えたアップライトポジションが可能とする”マルチライディング”特性。スマートでタフ、都会的な洗練を冒険心をかき立てる力強いデザインの”クロスオーバースタイル”とされた。

そして、最大の関心事は、新設計のそのエンジンである。Hondaにしては珍しい直列2気筒エンジンで、SOHCながら4バルブ。270度位相クランクと1軸1次バランサーを採用し、最高出力が37Kw、6,250rpmで、最大トルクは61N・mを4,750rpmで発生するというもの。

さらには、2輪用エンジンとしては初めてのアルミ製の軽量ロッカーアームの採用に代表される、Hondaの現時点での最新の低フリクション技術がすべて注がれる等で、41.0km/L(60km/h定地素行テスト値)と言う高い燃費性能もすぐれた個性である。

また、カムシャフトからウォーターポンプ、バランサーシャフトからオイルポンプを駆動するなどでエンジン自体のコンパクト化も積極的に行われている。

加えて、スロットル開度の1度単位にこだわったとされるエンジンのピックアップとレスポンス、リニアリティーと、扱いやすさには並々ならぬこだわりで作り込まれている。

直列2気筒のシリンダーは、低く積めるように62度の傾斜を与えられ、さらに7度クランクケースを前傾させてエンジン上のスペースを稼ぎ出す工夫が行われ、低重心化が実現されている。

フレームも、ビギナーからベテランまでの幅広いライダーが日常で気軽に使え、ツーリングあFUNライドまでこなせるよう、ある種のオールマイティーさを与えられながら、大容量のラゲージスペースやシート下の燃料タンク等の艤装レイアウトの自由度を確保するといった欲張った設計要件を満たすべく設計された独自のダイヤモンドタイプ。


さて、実車は、一見して、Hondaのクロスオーバーモデルを象徴する、先が尖ったデザイン、直線と曲線を巧みに構成しながら造形されるエッジの効いた凝縮感のあるデザインが特徴的で、正にHondaの新世代を代表するスタイルで、排気量に見合った軽快さも表現され、見るからに乗りやすそうな印象である。

だが、いざ、またがる段になると、見た目の印象以上に大柄なことに気がつく。シート高は830mmと最近では珍しくない数値だが、幅が広いし、乗車1Gではサスペンションが沈み込んでくれない。そう、このニューミッドシリーズは、グローバルモデルでもあり、大柄な欧米のライダーにも対応するサイズとセッティングなのである。ポジションに言及するとハンドル幅等も気にはなることだが、まぁ手を入れられる箇所でもあるので...。

ただし、圧倒的に重心が低く、安定感があるために、低速域からでも不安はない。この印象は他に例を見ないほどで、間違いなく誰にでも乗りやすい特性である。走り出してしまえば、明快のこのモデルのコンセプトを再確認することができ、通快極まりない。

エンジンも同様で、スロットルを明けた瞬間に反応して、強力に加速するエンジンは、これまた個性的。ミッションは6速で、しかも、ワイドレシオであるにも関わらず、あっという間にレブカッターが介入する回転まで吹き上がり、慌ててシフトアップすると次のギヤでも瞬く間に同じことが起こる。因みに、100km/h走行は3,400回転前後行える。

もっと高い速度域でまで、ストレスなく達することが出来るのは明確で、高速道路をつかった長距離ツーリングは得意だと感じた。余談だが、以前、見つけたイタリアでのテスト風景のYouTube動画では楽々と168km/hを出していた。

フレキシビリティーの高いエンジン特性によって、ワインディングでも楽しくこのモデルを走らせることが可能で、リニアなエンジン特性は、少々荒れた路面でも高いトラクションを得る事が出来る。これまでは、シフトダウンしてまわっていたコーナーをそのままのギヤでコーナリングすることも可能であろうし、ちょっとだけジェントルにそれでいて十分に速く走ることも可能である。そこには、従来にない、走りの楽しさがありそうである。

そして、バイクでありながら、スクーター並の利便性を備えていることも大きな魅力である。21L容量のラゲージスペースは、かなり使える。そこを確保するために相当の努力が払われたとは開発担当者の方からうかがったが、バイクの常識を変えるほどそれは有用な装備である。

優れた燃費性能や、さらなる走りの楽しさ、利便性は、残念ながら、限られた今回の試乗で確認することは出来なかったが、是非、長距離移動、長距離ツーリングをしてみたい。本当にそう感じるほど、このNC700Xの持つ個性的で高いパフォーマンスの片鱗を感じることができた。新しい楽しさをもった存在であることと同時に。(文:モリ ヒサシ 撮影:Avocado 撮影協力:Taillight)

Hondaのクロスオーバー顔。確実に洗練されてきている。
このアングルからは意外にもグラマラス。隠された機能故のデザインである。
個性の多くを生み出しているエンジン。扱いやすくかつマッシブな特性。
ウェーブデザインのローターは320mm径。十分な制動力を発揮する。
240mm径のリヤブレーキ。歯切れ良い独特の排気音を奏でるマフラー。
コンパクトなスクリーンとシンプルで見やすいメーター。 
ヘルメットを収納できるラゲッジスペース。容量は21L。
車体の低重心化に寄与するシート下の燃料タンク。給油口は使いやすい。
NC700X主要諸元:
車名・型式:ホンダ・EBL-RC63/全長×全幅×全高(m):2.210×0.830×1.285軸距(m):1.540/最低地上高(m:0.165/シート高(m):0.830/車両重量(kg):214ABS 218/乗車定員(人):2/燃料消費率(km/L) 41.0<60km/h定地走行テスト値>/最小回転半径(m):3.0/エンジン型式・種類:RC61・水冷4ストロークOHC4バルブ直列2気筒/総排気量(cm3)669/内径×行程(mm)73.0×80.0/圧縮比:10.75最高出力(Kw[ps]/rpm):37[50]/6,250/最大トルク(N・m{kgm}/rpm):61[6.2]/4,750/燃料供給装置形式:電子式・電子制御燃料噴射式(PGM-FI)/始動方式:セルフ式/点火装置形式:フル・トランジスタ式バッテリー点火/潤滑方式:圧送飛沫併用式/燃料タンク容量(L14/クラッチ形式:湿式多板コイルスプリング式/変速機形式:常時噛合式6段リターン/変速比:1 2.812 2速 1.894 31.454 41.200 51.033 60.837/減速比(1/2次):1.731/2.687/キャスター(度)/トレール(mm27°00′/ 110/タイヤサイズ:(前)120/70ZR17M/C(58W) (後)160/60ZR17M/C(69W)/ブレーキ形式:(前/後)油圧式ディスク/懸架方式:(前)テレスコピック式(後)スイングアーム式/フレーム形式:ダイヤモンド
メーカー希望小売価格:649,950(消費税込み)ABS699,300(消費税込み)>

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